2021-03-06

遺書、のようなもの。

 















ある作家の本を何冊も、1日で読み込んでいる。


生まれてからこのかた、海の底のあたりでずっと

溺れているような感覚を消せないでいた。

が、

この作家の文章は、それをなぞるかのようだ。


息苦しい。

生き、苦しい。


私から酸素をたくさん奪っていくもの。

それは、”押しつけ”の世界である。


長らく二人姉妹だった。

姉がバレエを習いたいと、団地の集会所で

レッスンを受け始めた。


あなたも一緒に。

いつの間にか興味のない世界で

アンドゥトロワと変な格好をしなければ

いけないことになっていた。

「あなたも一緒に。平等に」

と、母は言った。私は正しい、と。


のちのピアノも同じだったが、

「平等」とは、

「あなたのしたいことは何?」と

聞いてくれることじゃないかと

少なくとも本質はそうじゃないかと、

心で涙目になっていた十代未満の生き物。


私は野球やサッカーがしたかった。

サイクリング車に乗りたかった。

スケボーが欲しかった。

聞いて、欲しかった。


平等にしたいという気持ちを壊さないように、

バレエやピアノを始めた。が、いつも、

ものもらいや発熱で座礁して終わった。

親の喜びを諦めてもらうには、体で訴えるしかなかった。


私は頭が悪い。

決して謙遜なのではなく、頭がよくない。

それをなぜ知ったかというと、

父の頭脳を垣間見たからだ。

何を聞いてもすらすらと答えてくれる。

中学生の難問を、高校生の定理で教えてくれる。

大学でどんなに調べてもお手上げだった問題を、

夜中に帰ってきて懇切丁寧に書き記して

起きたらすでに会社に行っていた。

これは自慢で、父の兄弟はみな京大。

だから、自分の頭の悪さがクリアに客観視できた。


頭が悪いから、テストで頑張って

(全教科を教科書丸暗記)、

成績をキープしていたが、

それはちゃっかり推薦入学するためだった。

普通に受験したら不合格に決まっていた。


世の中で「ほぅ!」と思われる大学にも

推薦で入れたのに、身の丈に合わないことが

わかっていた。

なので、世の中で「へぇ!」と言われる程度の

大学にあっさりと面接もない推薦で入った。

(だが、受験したら決して入れないところだ)。

なのに、母は「三流」とのたまった。

(母は中卒です。学歴が人格と比例しないのは

母から教わったのだが)。


話をもとに戻そう。


”押しつけ”の世界に、最後のカードを出して

このゲームを終わらせたい。


私の受信能力は、如何様にしても圏外なのかと思う。

何かをいただいても、(唾を飲み込む)、

嬉しくない、のだ。

ごめんなさい。


うっかりお菓子を贈ると

すかさずお金が振り込まれてしまう。


うっかりお菓子を贈ると

別の何かが届いてしまう。


うっかりお菓子を贈っているけれど、

お金やモノに変えて欲しくなかった。

気持ちをお金やモノに変えて欲しくなどなかった。

(子供じみたわがままだ)。


うっかりお菓子を贈るのは、

もうやめようと思う。

その人だって居心地がつかなくて

何かしなくては、と思ったのだ。

うっかりお菓子を贈ってごめんなさい。


長々と書いているが、こんなことが常に、

胸を覆って、息ができない。


何で生まれてしまったのだろう。

何で、震災で亡くなった人と引き換えに

できないのだろう。

申し訳ない。


その分、生きろ とか

親孝行しろ とか

感謝しろ とか


日本語がおかしい。

自粛を要請、と同じ。



それでもいま息をしているのは、

いたいけな  唯一の

友であり家族の 猫がいるからだ。

お菓子を何度も買ってくれる人が

いるからだ。


それ以外に、もう心には届かない。

いつも完売で買えなくて、、、と

言ってくれても届かない。



なぜお店を開けないの?という圧を感じる。


嗅覚と味覚を失いたくないからだ。



なぜホワイトデーやらないの?と空耳がする。


人工的な波に乗りたくないサーファーなのだ。

陣痛がきてから産みたい派なのだ。

(人間を産んだことはないが)。


人からホワイトデーが過ぎ去った頃に、

もっと春を感じるウキウキしたセットを作りたい。



そうそう、タイトルの「遺書」のようなモノを

書いておこうと思う。


いつ、どのようにこの世から去ったとしても

満足だ。

思い残すことは何もない。


この「ありんこハウス」は、

手弁当で作ってくれた設計士さんに託したい。

幸せな毎日を十何年も送っている。

どうもありがとう。


お菓子を食べてくれた人に

心から感謝を。



メールやお便り、贈り物にお返事ができなくて

ごめんなさい。

どうもありがとうございます。