2014-09-07

ジャムシネマ (長いです、すみません)

これといって何もしない夏休みだった。
おかずもつくらなかった。
御飯にお塩をかければ十分だったから。
その代わり、くだものはたくさん食べた。
はじめは、ジャムをつくろうなどと思いもせずに、
旬のものを、悔いの残らないよう必死に食べた。
まずハマったのが、茨城産のマスクメロンだった。
おそらく、震災前には倍以上の値段だったにちがいないが、
ものすごく値下がりしていて、うっかり無収入なのに買ってしまった。
そして、ひとくち食べたら、あまりに美味しくて、美味し過ぎて土下座した。
なぜなら、震災以降、なんとなく、申し訳ないと思いつつ、
産地を見て、なんとなく、こっちにしよう、と別のを選んでいたからだ。
そのあいだに、それまで以上の思いで生産者の方々は工夫をして
美味しさをさらに追究し、それにもかかわらず値段は下がり、
涙をこらえてつくりつづけてきたのだろう。
思わず心で土下座したのは、ひとくちでそう思うほど、
美味しかったからだ。そして天にも昇る気持ちになった。

茨城産のメロンが見当たらなくなると、
次は長野産ネクタリン。ネクタリンの後はワッサークイーン。
その間ずっと、メキシコ産のオーガニックバナナ。
そういえばアメリカンチェリーも今年は豊作だったのかお手頃で、
イメージはわしづかみで食べた。

不思議な事に、「美味しいモノしか食べたくない」と心に刻んだのは、
2月の大雪がきっかけだった。
雪をかきまくる→おなかが猛烈にすく→食べ物が無い
=なんでもいいから食べたい、
ではなかった。
猛烈に、美味しいモノが、食べたいと思った。

そして美味しいモノ=高級品とか産地とかは関係なかったのかもということに、
くだものを食べ続けて、
この夏気づいた。

で、ジャムの話はここから。
ジャムってそもそもは収穫の多い食べきれないくだものを
保存するためのものだと思っていた。
そしてそれはフレッシュなときのと比べると、
味も香りも食感もほとんど残っていなくて、
一匙二匙すくってパンにつけて、
ある日ぱたっと忘れる。
旬のときに生のくだものを食べて、美味しいと感じるそれ以上でないと、
ジャムは食べかけのまま冷蔵庫の奥に追いやられてしまう運命。

食べかけじゃなくても冷蔵庫になかったことのように放り込んでしまったジャムもある。
「バラの花びらのジャム」
(賞味期限切れているけれど大丈夫だと思う、とプレゼント?にもらった)。
どこにどう反応したらよいのだろう…….残念ながら…….バラはキャラじゃなかった。
みんなもどうしたものかとあぐねて、まわりまわってウチにきたのだろう。
でも、キャラじゃなかった。
そして引っ越しを機に、ごめんねと謝りながら分別して処分した。

そんなこんなで、ジャムの行く末にとても気に病むようになった。

まずは、フレッシュなときより美味しくなくてはいけない。
そして、一匙二匙で飽きてしまわない、5匙くらいの量がいい。
つかうくだものは、キャラじゃないモノはダメである。
できれば瓶は何かに使いたくなる形状がいい。
もしくは、お店にもどして返金されればなおいい。

つくる側としては、実験のようにワクワクするようなのがいい。

で、この夏くだものを食べ続けて
ジャムをつくる気がなかったのに、
できたジャムが4種類。

1つは、長野県産の洋梨。そのまま食べてみて、まだ熟していなかったのか、
イメージを覆すほどのモノではなかった。そこがいい。
ジャムにした暁には、もっと洋梨感を醸し出せる余地がある。
産地はどこがいいというより、地産地消。
なかなかうまくいかずに頓挫しかけたが、白ワインを少し加えた途端に、
映画で言えば「シングルマン」のような(映画ファンのみなさますみません)
淡々として美しい洋梨のジャムになった。
さいしょのイメージでは別添えで塩キャラメルのボンボンをつけて、
蓋を開けたときにポトンと加えてもらうのも考えたけれど、
これはこのままがいい気がして、付録をつけるのをやめた。

2こめは、長野県産のシャインマスカットをジャムにしたくなって、
めっぽう高いのに、志は高くチャレンジしたくなった。
マスカットといえば、フランスを旅したときを思い出す。
基本的に徒歩なので、すぐに喉がかわいてカフェに入る。
メニューで白ビールを探す。そこに載っているビールの味の説明で
マスカットのような、とか、オレンジピールのような、という単語を見つけると
ワオ♪(よくある白ビールの説明なのに。。。)と胸キュン。
で、マスカットとルバーブとオレンジピールを組み合わせてジャムにした。
これは「夏時間の庭」というフランス映画な感じ。(却ってわかりづらくてすみません)

3こめは、巨峰です巨峰!巨峰(連呼してすみません)をジャムになんて、
なんて大胆。巨峰はフレッシュが一番美味しいくだもの。でもやっぱり、
巨峰が巨峰が巨峰のジャムがつくりたくなって、いろいろ試した。
これは、生の巨峰を覆すに至っていない。
けれど、ドキュメンタリー映画「エル・ブリ」に感化されて、
ものすごーーく実験した。

4こめは、もうすぐ旬が終わりそうなモモ。モモだって生で食べるほうが
いいに決まっている。
いいに決まっているけれども、ストーカー的に究めてみたくなった。
モモ感を楽しめるように、脇役にルバーブと苺(今の季節に信州産が少し出て)を。
これは、なんというか、メリーゴーラウンドみたいなジャムになった。
映画で言えば「恋する惑星」。(映画ファンの方、重ね重ねすみません)。


なんて、塩ごはんと果物はいいコントラストであった。

この夏の研究課題提出おわり。




あ、販売はいつになるか、、、ラベルがまだできておりませんで、、、